福島県のある山。
そこはガイドマップでも注意を促している、ちょっとマイナーなルート(不明瞭な登山道は波線表記される)。
自然度が深くて、とても静か~な山域だ。
踏み跡の薄~い山奥の湿原、コバイケイソウの大群落、なんとヒカリゴケの発見と、感動と驚きの山行だった。
そんなところだから、他に登山者なんているはずも無く…
ココには、熊さんの落とし物がいっぱい(-_-;)
さて、皆様は「熊」について、どの程度ご存知でしょうか?
また、以下にご紹介する熊事件をご存知でしょうか?
夜寝る前に見ると、恐ろしくて眠れなくなるかもしれませんが、是非一度読んでみてください。
特に、「三毛別羆事件」は恐ろしいですよ・・・
世界中の人たちに愛される「熊」さん…
J.miuraの子供たちも「熊」さんが大好きだった。
でも、野生の「熊」さんは、決して可愛いだけの存在ではないようですね・・・
↑ブナの森。ブナの実は熊さんの大好物。
人間の歴史は、「熊」により多くの犠牲者を出してきました。
皆様は「カムイ」という言葉を聞いたことはありませんか?
アイヌ語で神格を有する高位の霊的存在のことを「カムイ」と言うそうです。
「カムイ」、何となく「神様」というイメージ、常に守ってくれる存在のように思えますが…
「カムイ」は「自然」そのもの。
人間に恩恵を与えてくれる一面もありますが、その反面、火山、地震、台風、そして「熊」など畏れるべき対象でもあったようです。
登山ガイド中にお客様からよく聞かれます。
「ここに熊はいるんですかぁ~?」
毎回こう答えます。
「もちろん居ます」
我々登山者は熊さんのお住まい「森」を歩かせて頂いているのです。
登山をしていれば、いつかは「熊」に遭遇するでしょう。
いや、皆さんが気づいていないだけで、すでにニアミスしているかもしれません。
「熊」はジッと茂みに隠れて、人間が過ぎ去るのを待っていてくれることもありますからね。
↑「熊だな」。熊が木に登り、枝を折りながら木の実を食べた痕跡です。
では、熊対策について考えていきましょう!
*以下に述べさせて頂くことは、J.miuraが今まで学んできたことや経験してきたこと、山と向き合う様々なプロフェッショナルの方々の経験談などを基に、J.miura流にまとめさせていただきました。
熊にも個性・性格がありますし、熊対策はケースバイケースですので、これをすれば絶対大丈夫ということではありません。
参考程度に読んで頂き、皆様なりの熊対策を考えて頂けるきっかけになればと思います。
熊に遭遇した時、安易にしてはいけないこと
走って逃げる→熊は足が速く、逃げるもの(自分より弱いと判断?)は追いかけてくるそうですよ。
死んだふり→これで助かった人もかつてはいたようですが…
若熊など好奇心旺盛な熊は、近寄ってきてじゃらけることがあるそうです。
鋭い爪と牙でじゃらけられたら…また、死肉を喰らう熊もいます。
木に登る→熊は木登りが上手なので、この策もどうかと…
リュックを投げる→その場しのぎの方法は危険。
仮にリュックの中の食べ物の味を占めると、常に人間を襲うようになってしまいます。
熊は執着心が強いので、熊に盗られたリュックを、取り返しに行くのは非常に危険です。
大声を出す→気合いに負けて逃げる熊もいるようですが、大声で熊を逆上させてしまい、攻撃に転じ向かってくる熊もいるようなので見極めが必要ですかね。
熊さんの特徴を知ろう
・嗅覚→非常に鋭く、食べ物の匂いに敏感。
・聴覚→鋭い。
・視覚→特に良いというわけでもない(熊が人間に気づいていないこともたまにある)
・学習能力が非常に高い。
・人慣れした熊は逃げない。
・熊避け鈴の音に慣れている熊もいる。
・執着心が強い。
熊の好物、タケノコ採りで人間が襲われるケースが多いのは、食べ物への執着心のためかな~
・足がかなり速い。
・木登りが得意。
・火は特に怖がらない。
・新芽、木の実、タケノコ、アリやハチなど昆虫、鹿の死肉なども食べる。
・人喰い熊は、再び人を襲いに来る。
・早朝・夕方に活発に行動する。
・基本的にほぼ決まった縄張りで行動(結構な広範囲)するが、木の実が凶作の年は行動範囲がさらにグ~ンと広がる(里にも降りてくる)
・5月~子供連れの親熊、子を守る意識が高く気が荒いので要注意。
・6月~7月発情期の熊、気が荒いので要注意。
・2~3歳の若熊は好奇心旺盛なので要注意。
・9月10月冬眠前の熊は活発に行動する。
熊に遭わない為に
↑J.miuraが20年以上愛用している「熊避けリンリン」。
コイツを鳴らしている時は、いまのところ危険な遭遇をしたことは無い。
●「音」により熊から去るように促す
鈴、ホイッスル(電子ホイッスル)、声(ホォーッ)、手をたたく、ペットボトル(異音ゆえ効果が高いという専門家も多い)、木をたたく 等
●「鈴」を携帯していても襲われた例もあるので過信は出来ない。
強風時、風向き、沢の近く、などは鈴の音は聞こえにくい場合がある。
休憩など立ち止まっている時は鈴の音が鳴りにくい。
単調な一色音は自然に感じてしまい、効果が薄れる(音出しも併用が必要)。
人慣れしている熊の場合、鈴の音に慣れている場合がある。
↑J.miuraも愛用のパワー森林香。嗅覚が鋭い熊にコチラの存在を「匂い」で知らせる。
虫除けにもなるので一石二鳥。
あるマタギさんの話だと、タバコの煙も嫌うらしいです。
こんな線香もあるようですよ~↓
遭遇してしまった場合の「熊サバイバル術」
生きてきた環境により「熊」にも個性があり、強気、弱気な性格もあるでしょうから、すべての熊に同じ方法が利くとは限らないでしょう。
人慣れして、人を恐れない「熊」がいることも忘れてなりません。
山で熊と向き合ったことのある先人たちの「熊サバイバル術」をまとめてみました。
クドイようですが、どんな熊にでも利く方法ではないと思うのでご注意ください。
●熊とある程度の距離がある場合の回避例
・目をそらさない(たまに視線を外し、威嚇で無いことを示す)で、後ずさりして逃れた。
・腕を大きく振って、自分を大きく見せたら、熊の方が先に去ってくれた。
・声、ホイッスル、鈴の音を大きく慣らしてこちらの存在を示したら去ってくれた。
・ジッと棒立ちになって動かないことでやり過ごした。
●熊との距離が比較的近い場合、また熊が近づいてくる場合の対応策
非常に恐ろしいことですが、熊がコチラに気づいていない場合や、コチラに興味を持っている場合、近づいて来ることが考えられます。
・こんな時、走って逃げてはいけない。
・まずは落ち着くこと。
・熊避けスプレー等、武器のスタンバイ(事前にイメージトレーニングが大切)
・熊から目をそらさず、熊の動向を観察。
・転倒に注意しながらゆっくり後ずさり。
・声(話しかける?)、ホイッスル、鈴などを鳴し、コチラの存在を気づかせる。
気の弱い熊なら、これで立ち去ることもある。
・腕を大きく振って存在を知らせる。
人間(自分)を大きく見せることで、熊が怖気づいて立ち去ることもあるようです。
・トレッキングポール、柴や笹竹など長い棒を前に出して「間合い」をとる。
あるマタギさんの話で、柴、釣竿などで間合いをとると熊は警戒してそれ以上近づきにくいという。
・立ち木を熊との間に挟み間合いをとる(防御になる)
・熊は蛇が苦手?これは狩猟時代のアイヌ民族の経験からの知恵だったようですが、熊対策に縄紐を
くねくね動かしてみせると蛇と勘違いして怖気づくとか。
縄紐の代わりに、ロープ、スリングなど使用して引きずるといったところでしょうかね。
↑人慣れした熊、人喰い熊対策の最終手段「熊避けスプレー」
●一番怖い、出合い頭の遭遇
人間も熊もどっちもビックリして一触即発。
これを避けるため、常に辺りを見回し気配を感じとりながら行動することが重要です。
J.miuraはマタギになった気持ちで、常に「熊」を探しながら歩いています。
なかなか遭えませんがね(笑)。
逃げきれない状況になったら「最終手段」は「戦う」か「防御」か?
戦闘モードが避けられない場合は、気合の大声と渾身の「一撃」しかないでしょう。
気合いの叫び、背負い投げ、パンチ…それで熊が逃げ出したという話はよく聞きます。
●「攻撃」
「熊避けスプレー」による攻撃
「熊の鼻」を狙った攻撃(ポール・ピッケル・鉈 等)
イメージトレーニングはしっかり行っていた方が良いと思います。
●「防御」
怖くて何もできない人は、うつ伏せになって、手を首の後ろは回して頭顔首腹部を守り、背負っているザックを楯にするしかないでしょう。
でも大怪我は避けられないし、喰われてしまっては…可能な限り抵抗し「戦う」方が、より無事でいられる可能性は高いと思います。
最悪の状況まで考えた、熊対策の安全管理、皆様も是非考えておいてください。
準備しておくことで心に余裕が生まれるはずですよ~(^_^)b
登山ガイドは、熊避けの用心棒にもなりますので(笑)、是非ご相談ください!
それではっ!山でお会いしましょう!
コメント