9月1日は「防災の日」 ~「自然」と向き合う「登山」を考えていきましょう~

アウトドアの知恵

災害大国と言われる日本。海外の国々と比べても、大雨、洪水、土砂災害、台風、大雪、地震、津波、噴火など、日本は自然災害が非常に多いと言われています。
我々の遠い祖先の時代から現在まで、人類はこの自然災害と長きにわたって向き合ってきました。
人間が生きるために必要不可欠な「空気」「水」「食料」を生み出し「心の安らぎ」を与えてくれる「自然」、時にとてつもない猛威を振るう「自然」、人類はこの「自然」に感謝と畏敬の念をもって向き合ってきたのです。

「今日は良いお天気ですね~」という何気ない日常の挨拶、「良い天気」であることは大いなる安心であり、今日も無事に生きていけそういう喜びであり、無事・健康であることを確かめ合う挨拶なのだと先生から教えて頂いたことがあります。
災害大国日本ゆえの意味のあるコミュニケーションなんでしょうね。
これからも大切にしてゆきたい言葉です。

さて、「自然」が私たちに与えてくれる恩恵について考えてみたいと思います。
我々登山者が自然から受ける恩恵は、なんと言っても「登山が楽しめる」ということなのではないでしょうか。
素晴らしい景観、可憐な花、日常の忙しさを忘れて心が癒されます。

上の画像、尖がったピークは蔵王の「ロバの耳岩」です。
蔵王生成の歴史の中でもかなり古く100万年前の活動で出来た「岩脈」だそうで、それが地表に現れているからスゴイ。
100万年前だと調査した方もスゴイですね。
この素晴らしい景観はまさに火山の恩恵です。

こちらはお馴染、蔵王のシンボル「御釜」。
蔵王の観光のシンボルですから、これも火山の恩恵ですね。
また「地熱発電」や「温泉」も火山の恩恵ですよね。
私も登山後には必ずと言っていいほど山麓の温泉に入浴してから帰宅します。
名山の麓には名湯ありですね!ついでに名酒もありです(笑)

厳しい自然の中に生きる可憐な高山植物。
登山をする理由がお花を観る為という方は多いと思います。
これは高山植物の女王と称される「コマクサ(駒草)」。
強酸性の砂礫地に生息してしいます。
栄養分の少ない強酸性の砂礫地が好きというよりは、他の植物が侵入してこられないので、この地なら生きていくことができると言った方がいいでしょうか。
駒草が観られる、これも火山の恩恵ですね~

運が良ければこんな白い駒草に出会えるかも。
蔵王もこの先、土壌の強酸性が薄まっていけば別の植物が侵入してきて、コマクサが全滅してしまうことも考えられますね。
遷移、これも自然ですね…

「水」や「酸素」を作りだしてくれる森。
自然が与えてくれる「水」「酸素」は人類にとってはとても重要な恩恵です。
これらが無いと生きていけませんから。

この木は、J.miuraも大好きな橅(ブナ)の木です。
ブナの森は「天然のダム」とも言われており、美味しい水を育んでくれる「天然のろ過装置」と言ってもいいですね。

このブナ(橅)、漢字で書くと「木」に「無」と書きます。
「木で無い?」
つまり、役に立たない木(木材として)ということでこんな漢字になったとか。
でも、役に立たないものなど無いですよね。
J.miuraも尊敬する、老子大先生も「無用の用」とおっしゃっていますからね。
世の中のすべてに無駄なものなど無いですよね。

山(自然)は豊かな水を育んでくれます。
残雪は解けて地中へとしみこみ、ブナの葉は雨や霧を受け止め、枝から樹幹を経由して大地へとしみこみ、長い年月をかけて地上にしみ出して沢へ、そして川となり大河となって、人里へと流れて我々に多くの恵みを与えてくれるのです。

蔵王の冬、自然の造形美としてあまりにも有名なのが「樹氷」ではないでしょうか?

「樹氷」形成の為には絶妙な条件が必要なのです。

  • 適度な降雪量→雪の少ない山では樹氷は出来ませんが、多すぎても樹氷は出来ません。
  • 適度な強風→冬型(西高東低)の気圧配置で、冷たく乾いたシベリア(北西)からの季節風が必要です。
  • 適度な低温→ -10℃~-15℃のところの絶妙な寒さ。
  • 多量の過冷却水滴の存在→氷点下の不安定な水滴で、ぶつかると同時に凍ります。この過冷却水滴が少ないと、樹氷の形成が出来ません。不純物が非常に少ない水(過冷却水)は氷点下でも氷らずにいられるのです。
  • そしてアオモリトドマツの存在。

「樹氷」できるということ事態、ホントに奇跡ですね。これも自然なんですね~。

しかし、山(自然)が与えてくれる「恵み」「安らぎ」「素晴らしい景観」「可憐な花」は「厳しさ」の中のほんの一部一瞬にすぎないことを思い知らさることがあります。

上の画像は一切経山の噴気。
現在、火山噴火予知連絡会が選定した
「概ね過去1万年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山」
として、111火山が活火山に認定されています。
蔵王、栗駒山、鳴子、吾妻、磐梯山、安達太良山、岩手山、鳥海山…などなど、我々が歩いているほとんどの山が活火山なのです。

2014年9月27日に発生した御嶽山の噴火は、噴火警戒レベル1(平常)の段階で噴火したため、火口付近にいた登山者ら58名の方々が犠牲になりました。

火山系事故では、火山性ガスによる中毒死も発生しております。

また、2009年7月16日に発生したトムラウシでの山岳遭難事故は、森林限界を超える自然環境が厳しい山域で悪天候に見舞われたことで、ツアーガイドを含む登山者8名が低体温症でお亡くなりになりました。
雨、風、低温の悪条件が重なったこと、それを防ぎきれなかった為に低体温症に至ってしまったのです。
素晴らしい景観、可憐な花を楽しむための山(自然)には、必ず裏側に「厳しさ」があることを忘れてはいけません。

この画像は刈田岳の山頂にある伊達宗高公(伊達政宗公の7男)の石碑です。
1623年から刈田岳の噴火が始まった際、政宗の命令を受け祈祷のために18歳の時に刈田岳へ。
火山灰にまみれながら噴火の鎮静を祈ったそうです。
その数年後、宗高公は天然痘(てんねんとう)で亡くなったそうです。

この時代の人たちも、蔵王の火山と向き合っていたのですね。

この画像からもう一つお伝えしたかったのは、宗高公の石碑の右側に見える白い線、これは落雷の跡です(昭和54年7月8日落雷)。
標高の高い山では特に落雷に対する注意が必要です。
早出早着きの行動計画、常に空を観察し状況によっては早めに下山するなど臨機応変の対策をとらなければなりません。
大自然の前では「常に予定通り」とはいかないのです。
自然は待ってはくれません。

落雷に注意しなければならないのは登山だけではありません。
毎年のように身近な野外における落雷事故も発生しています。
日常でも、早めに「車」や「丈夫な建物」に避難することが重要です。

このように登山者は山岳遭難事故という形で、自然から厳しい洗礼を受けることがあります。
山岳遭難の多くは、道迷い・滑落・転落・転倒・疲労・病気(脳梗塞・心筋梗塞・低体温症・熱中症 等)・大雨(渡渉事故 等)・噴火・雷・雪崩・熊・スズメバチなどです。

「登山」では常にこれらに備えながら、歩かせていただくことが重要です。

山(自然)を歩くということは、自然と向き合うことそのものです。

上の画像は亘理町の「七峰山」頂上付近からみた阿武隈川です。
阿武隈川の最初の一滴の水は那須連峰方面の甲子山(かしざん)辺り。
福島から宮城に入り亘理町・岩沼市辺りで太平洋へと注ぎます。

2019年10月12日の台風19号は、阿武隈川の流れに沿うように移動し、福島県、宮城県内に大変な洪水被害・土砂災害をもたらしました。

自然災害は、日常生活の場においても猛威を振るいます。
近年の台風は規模が非常に大きく、風速・雨量ともに経験則が全く通用しません。
被災地のご長寿の方々が語っていた「こんなことは今まで生きてきて初めてだ」という言葉は肝に銘じておかなければならないと感じました。

こちらの大河は、石巻市のトヤケ森山からみた「北上川」です。
北上川の最初の一滴の水は、岩手県の七時雨山辺り。
岩手~宮城に入り石巻市辺りで太平洋へと注ぎます。
地形図を見ると、北上川は「新北上川」と「旧北上川」に分かれています。
昔から多くの治水工事が行われているという「北上川」、今の昔も流域に住む人々は良いときも悪いときも、常に「川」と向き合う生活を送ってきたのでしょうね。

2019年10月13日、台風が過ぎた朝の景色。
J.miuraの実家の東側の田んぼは、湖となってしまいました。
私の幼い頃の記憶をさかのぼると、このような状況になったことは、過去に3~4回あるような気がします。
無邪気な幼い頃は、船を浮かべて遊んだことを覚えています。

こちらの画像もJ.miuraの実家の東側、2011年3月11日、東日本大震災の「津波」の3日後です。
奥にある松の並木に注目して比較してください。
あれから9年が経過し周りの建物は変わりましたが、一つ上の「洪水」の画像と水の溜まり方は同じです。

J.miuraの災害歴

巨大津波 1回

巨大地震 2回(東日本大震災・宮城県沖地震)

洪水 3~4回

台風 数知れず(強風によるひどい被害は無し)

雷 数知れず(被害は無し)

噴火 0回

火事 0回 *自宅以外で消火活動1回あり

こんな経験はもうたくさんだけど、常に備えは怠らず、しっかり「自然」と向き合っていきたいと思っています。

皆さんも、山でも日常でも緊急時・災害時には以下の事に注意してください。

「自分は絶対大丈夫!」「まだまだ大丈夫!」「ここなら絶対大丈夫!」
といった正常性バイアスに陥らないように、しっかり目の前にある現実を受け入れましょう。

「まだまだ大丈夫だから行けるよ!」「ここまで来ないから大丈夫だよ!」
という根拠のないミスリードにも流されないように、しっかりと自分の五感で判断しましょう。

一般社会ではプラス思考のポジティブ派が歓迎される為、ミスリードが多く発生してしまいます。
臆病と言われても、神経質と言われても、マイナス思考と言われても、ネガティブな判断が正しい選択となることもあるのです。

登山も災害も大自然の前では常に謙虚に、「退く勇気」「逃げること」と、その決断が大切です。

こちらの画像は、東日本大震災の震源地に最も近い山「金華山」。
2011.3.11以降、J.miuraは毎年一回以上必ず訪れるようにしています。

大自然の中で活動する「登山」は、「生きる力を身に付けるための修行」であり、人間が忘れかけている自然との関わり方を学ぶことができるのです。
つまり「登山」を通して自然災害とも向き合う術を学ぶことができるのです。
「自然と謙虚に向き合う心」「万一に備える装備」「様々な状況に対応する技術」など、登山の心構え、装備、技術は、防災にも通用するものです。
これがJ.miuraが多くの皆様にお伝えしたい「登山道 三浦流」の心です。

現在、レクレーションとして楽しまれている「登山」ですが、単なる趣味で終わらせず、日常生活の一部として、自然災害防災対策として、楽しみながら生涯スポーツとして、たくさんの方々に続けてほしいと思っています。

By 宮城の登山ガイド「J.miura」
J.miuraは「登山道 三浦流」を極めるべく、今日もまた歩き続けています。
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