「雲の峯 幾つ崩て 月の山」
(くものみね いくつくずれて つきのやま)
これは、宮城の登山ガイドJ.miuraも尊敬する松尾芭蕉先生が「月山」を詠った句です。
「おくのほそ道」によると、1689年7月22日(旧暦6月6日)、松尾芭蕉先生は「月山」を参拝(登頂)しています。月山にぶつかり湧き上がる雲。
今から約330年前に松尾芭蕉先生が見た風景は、時を越えても私の目の前にあるこの風景と同じだったのかなぁ~、そんなことを考えてしまいます。
「月山」山頂から「鍛冶小屋跡」へと下るところに、松尾芭蕉先生の月山登拝270年を記念して昭和33年(1958年)7月に建立した句碑がありますので、ぜひ立ち寄ってみてください。
さて、今回は「月山」を登山される皆様のための予備知識としまして、ちょっとだけ見どころやポイントをご紹介いたします。
私、J.miura も登山ガイドやプライベート登山で春夏秋冬「月山」には何度も訪れていますが、本当に何度来ても飽きることがない素晴らしい山です。
その広大な山域のすべてが山形県内にすっぽり収まっているので正真正銘「山形県民」の山、山形県の皆さんが本当に羨ましいです…
「出羽三山」なんて言葉もよく聞きますよね。
「出羽三山」とは山形県にある
「月山1984m」
「羽黒山414m」
「湯殿山1500m」
の三山のこと。
古から現在に至るまで、山岳信仰の山として多くの人々に歩かれており、羽黒山(現在)~月山(死後の世界)~湯殿山(未来)を表していると言われています。
まず「羽黒山」をお参りして現世での穢れを洗い流し、魂となって「月山」をお参りし、そして「湯殿山」奥の院を参拝して生まれ変わるのです。
J.miuraもこのルートを何度も歩かせていただき、何回も生まれ変わりましたよ~(笑)。
今回ご紹介するルートは、月山の北側標高約1390m地点の月山八合目登山口から歩く修験者の修行の道です。
月山八合目登山口(駐車場有)~弥陀ケ原~仏性池~行者返し~大峰(風衝地)~月山山頂(1984m)~牛首(分岐)~金姥(分岐)~装束場(施薬避難小屋)~月光坂(鉄梯子の連続)~湯殿山神社へと向かう縦走路は・・・
登り:歩行約3.5時間(八合目登山口~月山山頂) 標高差約600m
下り:歩行約3.0時間(月山山頂~湯殿山神社) 標高差約930m
個人山行での縦走は車を回送したりと準備に少し手間はかかりますが、八合目登山口から山頂の往復でも十分楽しいルートです。
最初の見どころはスタートしてすぐの「弥陀ケ原」です。
湿原、池塘、高山植物、遠方には鳥海山が見え「極楽浄土ってきっとこんな所なんだろうなぁ」なんて思ってしまいます。
月山登山は自信が無いという方も、弥陀ケ原ハイキングだけでも十分来る価値はある素晴らしい場所です。
七月下旬から八月上旬、タイミングが良ければ氷河期の生き残り称される「オゼコウホネ」にも会えるかも!!
まるで黄色いジュウタン!「なんじゃこりゃぁぁぁ~」
「こんな景色いつどこで見れんの?」
「夏の月山山麓、弥陀ケ原でしょ!!」
この黄色いのは「キンコウカ(金光花)」の大群落なのです。
実際に行って近づいてよく見てください。
黄金色に輝く小さな星のような花なんですよ。タイミングが合えば見れますよ~
こちらの大きな黄色い花は「ニコウキスゲ(日光黄菅)」。
月山を代表する花の一つです。朝に咲き夕方にはしぼんでしまう一日花。
「ニッコウキスゲ」には「日々新たに」という素敵な花言葉があります。
こちらは「仏生池」です。「羽黒山」で身を清めた後、ここで「死に水」を取り魂となるそうです。
「仏性池」のほとりにある「仏性池小屋」です。
「月山」山頂までの中間地点にあります。
売店、トイレもありますが営業期間がありますので要確認です。
「仏性池小屋」の後ろにあるのが「オモワシ山(1,828m)」。真の頂きを隠し自らを頂上と「思わし」めることに由来するので「オモワシ山(思わし山)」だそうです。
登山ガイド中たまに聞かれますが…
お客様 「ガイドさん、あれ山頂ですか!?」
J.miura 「残念っ!違います、あれはオモワシ山、ここはまだ登り行程の半分の地点です~(笑)」
お客様 「アハハハ・・・(苦笑)、ハァ⤵」
「オモワシ山(思わし山)」を過ぎると、「月山」山頂方面が姿を現します。
近いような遠いような・・・。
この先にあるちょっとした岩場が「行者返し」。修験道の開祖の言われる「役行者様(えんのぎょうじゃ様)」が、修行が未熟なので「羽黒山」に返された(月山大神に?)という伝説がある場所なのです。
もしバテてしまったら、潔く諦めてここで引き返しましょう。
登山において、退く勇気と決断は大切です。
「月山」山頂へと向かう最後の直線。ここは「大峰(おおみね)」と言われる風衝地(ふうしょうち)です。
厳冬期は雪もつかないほどの強風が吹き荒れる場所、月山の中でも最も厳しい環境の場所なのです。
でも、こんなところにも美しい高山植物が咲いていました~
風衝地に咲く美しい花「トウヤクリンドウ(当薬竜胆)」。
月山の高山植物と言えば、J.miuraはこの「トウヤクリンドウ」がまず浮かびます。
初めてみたときは「あっ!白いリンドウだっ!」とびっくりし感動したことを覚えています。
山域、開花時季もあるのでなかなかお目にかかる機会は少ない花。
「月山」に行ったらぜひとも探してほしい高山植物です。
そうそう、あと山頂付近の「クロユリ」も「月山」を代表する花ですね。
こちらは5月中旬の「月山」山頂と「鳥海山」の写真です。日本神話の天照大御神(あまてらすおおみかみ)の弟にあたる、月読尊(つきよみのみこと)を祀っています。
月は農業に大切な暦と関係することから「農業の神」ともされています。
「月山」が育む豊かな「水」は、豊富な残雪がブナの森によって濾過されて、長い年月をかけて地上にしみ出し、沢から川となり、人里へと流れ、やがて美味しい米に、そして美味しい日本酒になるのです。
「銀嶺月山」こんな日本酒を飲んでみたいねぇ~
現実的なところではこっちかな(笑) こちらの「銀嶺月山」も美味しそう!
「月山」山頂から、松尾芭蕉先生の句碑を過ぎ、「鍛冶小屋跡」も過ぎて、ガレた急斜面を下りきると、石畳の歩きやすい登山道に。
ここは「牛首」の分岐付近です。爽やかな草原風景が広がります。
また、「月山(1984m)」に最短で登りたいならば、西川町側の姥沢口から月山リフトを使用しての往復が楽々です。
月山リフト上部から「牛首」経由で「月山」山頂まで約二時間です。
「牛首」の下部、「四ツ谷川」源頭部の風景。
ここから流れ出した水が、「寒河江ダム」~「寒河江川」~「最上川」~「日本海」へと注ぎます。
「牛首」の分岐を過ぎ、「柴灯森」を過ぎ、「金姥」の分岐から湯殿山方面へ向かって下っていくと、目の前に「湯殿山1500m」が姿を現します。
「湯殿山」には登山道は無いので一般登山者向きではありません。
ちなみにJ.miuraはウインターシーズンにスノーボードや雪山登山で登頂&滑降しています。
「湯殿山」に向かって下っていくと、鞍部にある「装束場(施薬避難小屋)」に着きます。この「装束場」は月山を越えてきた修行者が草鞋(わらじ)を履き替えて装束を整え、心身を整えてから「湯殿山神社」へ向かうための小屋であったそうです。
「装束場(施薬避難小屋)」から「湯殿山神社」へは鉄梯子の連続、「月光坂」の急斜面を一気に下ります。
ご存知の方も多いかと思いますが、出羽三山の奥の院「湯殿山神社」では「語るなかれ言うなかれ」という、修行者に対しての戒め(いましめ)があります。
松尾芭蕉先生の紀行文「おくのほそ道」の中でも
「一般に、湯殿山の細かいことは、修行者の決まりとして、他人に話すことが禁じられている。従って、これ以上は筆を止めて記さないことにする」
と記しているのです。
ぜひ皆様自身で参拝してその目で確認してみてくださいね。
皆さんは最近どうですか?
ウイズ・コロナ生活にも何となく慣れてしまっていませんか?
遠くへと出かけたくなる夏ですが、県をまたぐ移動はよく状況を考えてから行動しましょう。
夏は登山者が増え、県内でも「泉ヶ岳」「蔵王」「栗駒山」などの人気の山は「山頂」などでの混雑が予想されます。
以下をもう一度確認して気を引き締めて直して安全に登山を楽しみましょうね。
新型コロナウイルスと向き合う 新しい登山様式の提案はコチラです
https://mother-nature.net/2020/05/14/measures-covid19/
By 宮城の登山ガイド「J.miura」
J.miuraは「登山道 三浦流」を極めるべく、今日もまた歩き続けています。
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